My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「っと、セーフ!危ない危ない」
蛙を包み込むように捕まえた手は、雪のものでもトクサのものでもなかった。
ましてや周りにいた団員達のものでもない。
「確保成功♪」
その青年は、雪とトクサの真後ろに立っていた。
にんまりと笑う、どことなく人懐っこい顔。
太陽のように燃える赤毛に、翡翠色とまではいかないが緑に近い瞳。
この場にはいない、あの赤毛の兎名のエクソシストを思い起こさせるようだ。
「「「…誰?」」」
しかし彼は隻眼のエクソシストではない、見知らぬ誰か。
突如現れた他人にぽかんと周りが見守る中、赤毛の青年は気にした様子なくにこにこと笑っていた。
「この蛙は僕のペットなんだ。殺して貰っちゃ困るのさ」
「ペットですって…気持ち悪いですわ…」
「テワク」
まさかの蛙を愛玩動物として所有している者がいたとは。
ゾゾッと鳥肌を立たせるテワクに、リンクの制止が入る。
「だって本当に気持ち悪」
「テワクっ」
「わ、私知ってるよっ蛙をペットにしてる人!別に可笑しくないでしょ」
余程苦手なのだろう。
それでも鳥肌を止めないテワクに、雪は慌てて取り繕うように会話を差し込んだ。
「ガマ子って名前まで付けて可愛がってる人もいるんだから」
「誰ですかそれ」
「ええと………誰だっけ」
「…こんな時に空想話をぶっ込んでこないで下さい」
「く、空想じゃないよっ本当に知ってるんだから!」
「ハイハイ」
「信じてないなその顔は…!ちょっと!トクサ!」
「僕は信じるよ」
「え?」
冷たい顔でそっぽを向くトクサを雪が追い掛けようとすれば、肩にぽんと乗る手。
振り返れば、青年が真っ直ぐな瞳を向けていた。
近くで見上げれば、頬の辺りで散るそばかすが愛嬌良くも見える。
「コイツを殺さないでくれてありがとう。君、名前は?」
「あ、月城雪って言」
「ツキシロユキだね!助かったよ!」
「わ、う、あ、いえっ」
途端に手を掴まれ、ぶんぶんと縦に振られる。
雰囲気と同じにスキンシップも気軽な性格のようで、その様子に神田だけが気に喰わない顔で眉を潜めていた。