My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「は、早く!早く取って下さいませ!」
「だからそんなに暴れないでって。生き物だから、手加減しないと押し潰しちゃう」
「潰しても構いませんわ!」
「そんな殺生なことしないよ。食糧にするならまだしも」
「た、食べる…!?何を世迷言を…!気持ちの悪い!」
「あ、偏見。蛙って美味しいんだよ?鶏肉みたいにヘルシーで食べ易いし、料理次第で臭みも取れ」
「そんな気持ちの悪い話など聞きたくありませんわ!トクサぁ!」
「はいはい、すぐに取り除きますからテワクも落ち着きなさい。月城は邪魔です、私が殺…捕まえますから退いて下さい」
「……今殺すって言った」
「言ってません」
「言いかけた」
「言いかけてません」
「いや聞こえたから!別に殺す必要なんてないでしょ!?私が捕まえるよッ」
「貴女がモタモタしてるからでしょういいから退きなさい。そんな命の一つや二つ、どうせ道端で踏み潰される運命です」
「やっぱ殺る気かー!駄目!両生類虐待反対!」
「ちょっと!手を出さないで下さい…!いつから動物愛護なんてするようになったんですか貴女!面倒臭い!」
「髪から取るだけでしょーが!そっちこそ面倒臭いな!」
「テワクの髪が汚れたでしょう汚らわしい!」
「出たテワク馬鹿!髪と生き物とどっちが大切かなんて考えればわかるでしょ!」
「髪は女の命です!」
「それは強ち間違ってない!」
「い、ぃいいいぃいから早く…取って下さ…ませ…」
「はぁ…何をやってるんですか…」
「こ、これは踏み込もうにも踏み込めないである…」
顔面蒼白でガタガタと震えるテワクの両側で、我先に蛙を確保しようと悶着する雪とトクサ。
割り込もうにも割り込めない慌ただしさに、リンクは呆れた溜息を、クロウリーはおろおろと身を忙しなく彷徨わせた。
「なんの騒ぎかしら?」
「何やってんだあいつら」
「さぁ。ご飯の取り合いとか?」
「お前じゃねぇんだ馬鹿か」
「あ!また馬鹿って言った!」
「もう!二人はいい加減にしてッ!」
「「ハイ」」
二人の騒動に何事かとリナリー達も目を止める中、とうとう萎縮していた蛙が逃げ出すように、再びびよんっと飛び跳ねた。
「「「あ。」」」
跳ねた先には、一つの手。
それがパシリと運良く蛙を捕まえた。