My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「そういう所が駄目なんですよ。折角こんな天気の良い日に、お腹いっぱいご飯が食べられてるのに。ああヤダヤダ、こんな時まで神田の物騒な顔見なきゃいけないなんて」
「喧嘩売ってんのかクソモヤシ。つーか任務に遠足気分で来てんじゃねぇよッ」
「モヤシじゃないですアレンです。遠足気分なんて言ってません、少し力抜けって言ってるだけです。此処にAKUMAはいませんよ」
探知機能のある左眼を持つアレンの言葉なら、説得力のあるもの。
その言葉通り、近くにAKUMAは見当たらないのだろう。
大勢の人で賑わう街中で、アレンは悠々とチップスを食し続けていた。
「そんな四六時中ピリピリされたら、折角のご飯が不味くなります」
「テメェの似非笑顔見てるだけで俺の飯は年中不味いんだよ」
「神田なんて毎日蕎麦食べてるだけでしょ。同じものを馬鹿みたいに食べてたら味覚も可笑しくなるんじゃないですか?」
「テメェみたいな馬鹿な食い方はしてねぇよ大食らい馬鹿が」
「馬鹿って言った方が馬鹿なんですよバ神田」
「ならテメェが馬鹿だろ自分で言ってんじゃねぇか馬鹿か」
「はい馬鹿言った!」
「テメェが先だろ!」
「どっちも同じ!」
ゴンッ!
ヒートアップする二人の喧嘩に終止符を打ったのは、二人の頭に同時に振り下ろされた拳骨だった。
頭を抱えて悶える神田とアレンの頭に、忽ちに大きなタンコブが出来上がる。
「リナリーは強いであるなぁ…」
「本当、今回の任務に同行してくれて良かった。平和は守られたね」
遠目に傍観していたクロウリーが苦笑する中、雪は心底感謝するように頷いた。
リナリーが傍にいれば、二人も無闇に喧嘩は始めないだろう。
誰より怒らせると怖いのは目の前の少女だと、身を持って知っているからだ。
「しかしアレンの言う通り、本当に良い天気である」
周りを見渡すクロウリーの眼下には、大勢の地元民や観光客。
潮風を纏う、活気付いた港街である此処イギリスはリヴァプール。
元は港湾都市として栄えていたが、今では立派な観光都市の一つとなっている。
その理由の一つが、頭を抱えた神田とアレン越しに見える巨大な建物。
リヴァプール大聖堂と都市の名を付けたゴシック様式の国教教会寺院は、この街の自慢だ。