My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
団服に身を包んでヘラヘラしていた所も、六幻を手に子供っぽく遊んでいた所も、その冷静な顔で傍観されていたのかと思うと顔が熱くなる。
「ガキっぽくて悪かったですね…」
「別に馬鹿にしてる訳じゃねぇよ。いいんじゃねぇのか」
顔の熱さを隠すように、ぶかぶかの団服へと顔を埋めさせる。
そんな雪に対し神田は部屋に踏み込みながら、あっさりと肯定した。
「お前の素っぽいところとか、本音も聞けるし。見てて割と面白い」
「…それってやっぱり馬鹿にしてるんじゃ…」
「してねぇよ。だから顔向けてろ」
埋めて隠した顔を晒すように。
神田の手が、雪の団服の襟首のボタンを外す。
長い指が顎をするりと撫でて、軽く持ち上げてくる。
強制的なものではない、優しい促しに顔を上げて目が合えば、確かに神田の瞳は他人を蔑むようなものではなかった。
(あ…ユウの匂い)
ふわ、と鼻をくすぐる部屋の匂いが強くなる。
本人を目の前にして伝わる匂いに、ぴくりと反応した獣耳が向く。
くら、と微かに意識が揺れる。
それはアルコールに浸るような酔いにも似て───
「お酒臭いッ」
「…あ?」
堪らず即座に顔を背けた。
「ユウ、アルコールの匂い凄いする」
今の雪の鋭い嗅覚では、神田の体に浸みこんだアルコール臭がパンチのように響いてくる。
堪らず鼻を押さえて言えば、忽ちに神田の眉間に皺が寄った。
「お前だってしてんだろうが。何俺だけ臭いみたいな顔してんだ」
「え?…そう?」
「忘れたとは言わせねぇからな。俺の制止聞かずにがばがば酒飲みやがって。挙句に泥酔して悪絡みしてきたのは何処のどいつだ」
「…えーっと…そう、だったっけ…?」
「ほお。憶えてねぇのか」
「ご、ごめんなさい」
洋酒を味わい、ふわふわと楽しい気分に浸れたことまでは憶えている。
しかしその先の記憶は曖昧だった。
ひくりと口元を震わせる神田の目は、全く笑っていない。
このままでは拳骨の一発でも喰らい兼ねないと、危機感を悟り反射で後退った時。
「ッわ…!?」
床にずるずると引いていた団服の裾を踏んで、ずるりと滑る。
まるで漫画の一コマのように、雪は呆気なくその場に尻餅をついて転んでしまった。