My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「………」
ぐっと握り締めていた拳を解く。
袖の余る団服を着た手を伸ばせば、爪の先が微かに触れた。
硬い六幻の柄。
イノセンスの原石には拒絶されたことがあるが、ラビの鉄槌に触れた時はなんら問題はなかった。
それと同じ道理なのか、恐る恐る六幻の柄を握っても掌が弾き返されることはない。
思わずほっと安堵の溜息が漏れた。
「…重、」
持ち上げてみてわかる、ずしりと手に掛かる負担。
日頃ファインダーとして重い荷物は運んでいるが、手先で重い鉄の塊を操るような習慣はない。
堪らず両手で握り込む。
ラビの鉄槌のように、持ち主にだけ重力変異するイノセンスでもないだろう。
この重い刃をよく器用に振り回しているものだと、感心気味に高く持ち上げた。
天井に伸びる長く黒い光沢感ある鞘。
赤い布地や柄糸で装飾された刀は、黒塗りの中に浮き出るように鮮やかに朱が栄え、見惚れる程に美しい。
「…かいちゅういちげんっ」
興味が湧いて一振り。
勿論、そこから界蟲が出現するはずもないのだが。
軽く振り下ろしただけで、重さにつられて前のめる。
「わ、と……へへ」
神田の真似事をしている自分が、まるで子供のようで少し気恥ずかしい。
肩に鞘を掛けて苦笑い。
「何してんだ」
「うわぁッ!?」
をした瞬間、真後ろから響く声に肩が跳ね上がった。
「なっなん…!いつ、から、其処に…!」
弾けるように振り返れば、其処には見知った声の主。
この部屋の主が心底呆れた顔で、開いたドアに凭れつつ腕組みした姿で立っていた。
ドアが開く音なんて聞こえなかったはず。
いつの間に其処に立っていたのか。
「団服着込んで阿呆面してた時から」
「(そこから!)いやっこれは…その…ハロウィンだし!エクソシストの仮装、…みたいな…」
「ふぅん」
苦し紛れな言い訳は、白々しい目で見てくる神田の表情に負けた。
「すみません出来心で遊んでました」
「知ってた」
「知ってたてッ」
「お前、時々ガキっぽいところあるからな」
下げた頭を勢いで上げて突っ込めば、冷静な顔で返される。
どこまでもお見通しだったらしい。