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My important place【D.Gray-man】

第45章 10/31Halloween(番外編)



狼の耳と尻尾を付けたまま、教団内を歩き回る気はない。
大人しく神田を待つことにしようと、雪は再びベッドに腰掛けた。

よく軋む、硬く粗末なベッド。
これでは神田の日頃の疲れが取れないと、雪が用意したのは分厚いマットレスに柔らかいシーツ。
面倒臭そうにしつつも文句を言わない神田は、なんだかんだ雪の我儘を通し寝具を変えてくれた。
お陰ですっかり過ごし易くなった恋人の部屋。
腰掛けるベッドは程好く弾力があり、心地良い。



(…ユウの匂いだ)



すぅ、と深く息を吸う。
見た目は変わらなくとも、能力は狼のままらしい。
鋭い嗅覚は敏感に神田の匂いを嗅ぎ分けた。

良い香りではないが、きつい香りでもない。
充分に吸い込んで感じれば、不思議と落ち着く。



(これの所為もあるのかな)



神田の部屋だということも理由の一つだろうが、ふと目が止まったのは羽織っている大きなメンズサイズの団服。
パリの刑務所でも、薄い毛布の代わりに貸してもらったことがある。
あの時も神田の部屋で寝ているような気分だと、その匂いに錯覚を感じていたが。
今の雪には更に効果があるもののようだ。

なんとなく袖を通してみれば、やはり体格差故にできる服の余り。
辛うじて指の先が見えるくらいで、すっぽりと掌ごと隠れてしまう。
更に興味が湧いてベッドから下りてきちんとボタンを留めれば、丈の長いロングコートデザインの裾は床に擦れた。



「ありゃ…やっぱり。背丈も全然違うからなぁ…」



ずるずると裾を引き摺りながら、鏡に映る自分の姿を見てみる。
明らかに団服に着られている状態に、堪らず笑いが漏れた。

エクソシストに憧れたことはない。
彼らを象徴するこの真っ黒な団服にだって、焦がれたことなどなかった。
しかしぶかぶかな団服を見下ろす雪の目は柔らかく、左胸に縫い付けられたローズクロスを撫でる指先は優しい。



「………重い、」



が、それも一瞬だけ。
すぐにがくりと肩を落とし、呆れた目で団服に飾られた数々の装飾に目を向けた。
輝く光沢を備えたチャームやボタン等、全て本物の銀でできている。
その分、ずしりと体に掛かる団服の重みも増すのだ。

なんと余分なものか。

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