My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
(え、待って。…待って)
恐る恐る頭に両手で触れる。
ふさりとした感覚。
明らかに髪の毛ではない、三角形の何かがぴょこりと二つ突き出ている。
人にはないはずのもの。
「っ」
慌ててベッドから飛び降りれば、微かにくらりと頭が揺れた。
まだ酒が残っているのだろうか。
それでも裸足の足で踏ん張り、棚の上にある自分用にと置いてある鏡に手を伸ばす。
目の前に翳せば、鏡に映る自分の顔。
髪の間から伸びているのは、大きなふさふさの獣耳だった。
「ええー…」
よくよく観察すれば、それは耳だけでなく下半身にも。
ふさふさの尾が羽織っている団服の裾から見え隠れしている。
どうやら人の姿には戻れたらしいが、完全に人間へと戻った訳ではないらしい。
「そんなに時間経ってないのかな…」
コムイ特製ハロウィン仕様クッキーの効果は、一日だけだとティモシーは言っていた。
となればまだ24時間は過ぎていないのだろう。
カーテンの開いた窓から差し込む日差しは、充分に明るい。
「お酒で寝落ちちゃったんだ…きっと」
最後の記憶は、中庭で神田と洋酒を酌み交わした時のもの。
恐らく其処で泥酔して寝潰してしまったのだろう。
そして神田が自室まで運んでくれた、という説が一番妥当な所か。
(悪いことしちゃったな)
記憶を失う直前は、まだ狼の姿のままだった。
ぶつくさ文句でも言いながら抱えて運んでくれたのだろう、神田の姿を想像して苦笑い。
「でも何処に行ったんだろ、ユウ…」
ぐるりと一人用の部屋を見渡す。
雪が何かと自分用に持ち込んだ物で少しは人らしい部屋にはなったが、それでもまだ無機質さが残る。
その空間の主の姿はない。