• テキストサイズ

My important place【D.Gray-man】

第45章 10/31Halloween(番外編)



「───…」



ぼんやりと視界に映る部屋の内装。
柔らかいシーツに、温かい衣服。
大好きな匂いに包まれて目が覚めた。

なのになんだか頭が冴えない。
原因はわかっていた。



(……そっか…)



シーツの上で丸まったまま、更に身を縮ませて両手を握り締める。

夢を見ていた。
昔の自分。
キラキラと輝く魔法のような祭り事に、目を輝かせていた幼き頃を。



(…ティモシーもこんな気持ちだったんだ…)



祭り事を強く焦がれていた少年の気持ちが、今では痛い程わかった。
なんで一緒にハロウィンをしようと、頷いてやれなかったのか。
今更ながら後悔の念が募る。



(参加してあげればよかったな…)



後悔の念を抱えたまま、握り締めた拳を額に当てて強く目を瞑った。
視界が真っ暗になれば、他の感覚が冴える。
特に嗅覚は鋭く、正確に当たりの匂いを嗅ぎ分けられた。

体を包む、自分とは別の匂い。
この匂いは知っている。
慣れ親しんだ大好きな匂い。
微かな葉の匂いに、鉄と血が混じる。
嗅いでいるだけで落ち着くもの。

これは───



「ユウ?」



はっと目を開け顔を上げる。
ぼんやりと視界に映っていた部屋の内装が、はっきりとしたものに変わる。

意識が覚醒していく。
目の前に広がっていたのは、見慣れた物の少ない神田の部屋だった。



(あれ?)



はたと気付く。
此処は彼のベッドの上だ。
体に掛けられている丈の長いデザインの団服も、彼のもの。

そして。



「戻ったっ?」



先程、彼の名前を呼んだ時も。
そして今も。
口から漏れているのは、どう聞いても人語のもの。

ということは狼の姿から戻ったのか。

慌ててぺたぺたと自身の顔に触れる。
つるつるの肌に、にょきりと伸びてはいない輪郭。
見下ろせば、セーターの下から覗く二つの肌色の太股が見えた。
間違いない、体は人間へと戻ったのだ。



「やっ───」



た!と歓喜の万歳。
しかし雪の口から最後まで喜びの声が弾け出ることはなかった。



「…え?」



万歳をした両手が触れたもの。
それは自身の髪の毛だけではなく、ふさりとした奇妙な肌触りのものだった。



(え。)



嫌な予感が脳裏を走る。

/ 2655ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp