My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
ぺろぺろと遠慮なく顔を舐め上げる舌。
ただの獣ならうざいと放り出すところだが、相手が雪となれば別だ。
「わふ♪」
「っ…ォィ」
「ふんふん♪」
「待…おま、舐っ」
「♪」
「っだーッ!止めろソレ!!!」
顔中を至る所舐められ、長い舌が神田の薄い唇を掠めた瞬間ぶちんと切れた。
雪の口を鷲掴みし、強制終了させる。
「そういうことは人の時にやれ犬っころ。煽んな犯すぞ」
「……くふ?」
据わった目で睨みながら、まるで鬼か猛獣かの如く。
獣相手に凄みを利かせる神田も、多少は酔いが回っているのだろう。
しかしそれ以上に泥酔している雪には、脅しも響いていないらしい。
不思議そうに首を傾げるばかりで、そんな無防備な獣を前に神田の苛立ちも殺がれてしまった。
「…くそ。サッサと行くぞ」
「くふん」
改めて抱え直す。
体重は重いものかと構えたが、以前の雪と変わらない軽いものだった。
大人しくしてろと声を掛ければ、今度は返事良く一鳴き。
限界がきていたのだろうか、神田の肩に顔を乗せて満足げに尾を揺らすと、再びすぅすぅと寝入ってしまった。
静かになった雪に一息つきながら、片手で抱いたまま手早く酒瓶を片付ける。
頬に触れるふわふわの毛並み。
獣の匂いと雪自身の匂い、それから脈打ち巡るもの。
それらを感じて、くらりと微かに頭が揺れた。
思わず机に片手をつく。
「…チッ」
酒の飲み過ぎだ、と自身を叱咤。
単なる言い訳だということはわかっていた。