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My important place【D.Gray-man】

第45章 10/31Halloween(番外編)



「───で、結局こうなるのかよ」

「くふ…すぅ…」

「おい雪。起きろ」

「すー…」

「チッ…だから飲み過ぎんなっつっただろうが…」



人と獣ではあったが言葉を交わし酒を交わし、有意義な時間を過ごせたとは思う。
そうしていつの間にか、瓶の底間際まで減った琥珀色の洋酒。
大半は神田の胃の中へと送り込まれたが、そのアルコール度数は雪を泥酔させるには充分だったらしい。



「ふん…くふ…?」

「起きたか。お前、寝るなら部屋に───」

「わぅー」

「オイ。伸し掛かるな!また倒れんだろ!」

「あぅん?」



へら、と緩い顔で笑う狼に、威厳も何もない。
凛々しい姿はどこへやら。
大きな体を遠慮なく神田の上に伸し掛けてくる様は、悪酔いしてる証拠だ。
本人はじゃれてるつもりかもしれないが、今は体の大きな狼。
鋭い爪も大きな牙も、一歩間違えれば人間は怪我を負う。
エクソシストである神田だから良いものの、じゃれる相手が一般人となれば問題だ。



(問題が起きる前に連れてくか…)



元より中身は雪である。
誰が来るとも知れない中庭で、泥酔したまま放置などできない。
溜息混じりに脱いだ団服を覆うようにして雪に被せれば、きょとりと不思議そうに首を傾げられた。



「わぅ?あうっ」

「おいコラ脱ぐな。ちゃんと被ってろ、隠せねぇだろ」

「わぅん?」

「酒もなくなったし、いつまでも此処に残る理由はねぇよ。来い」



酔ってはいても、会話は理解できるらしい。
ずり落ちないようにしっかりと団服を被せてボタンを留め、毛並み豊かな体を少しでも覆い隠す。
四足歩行で教団内を歩き回っては目立つだけだと、軽く腕を広げて催促すれば、ぴんと立つ両耳と尾に輝く顔。

まるで散歩に行こうと誘われた飼い犬のような姿に、神田は一瞬嫌な気配を感じた。



「雪、待」

「あぉん!」

「ブッ」



案の定。
"待て"の号令を言い終える前に、大きな毛皮の体は神田の腕へと飛び込んだ。
毛皮の塊が突進してきても辛うじて抱き止めるところは、流石と言おうか。
しかし長い獣の舌がぺろりと神田の頬を舐めれば、ピシッとその動きも止まった。

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