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My important place【D.Gray-man】

第45章 10/31Halloween(番外編)



「きゅふん?(じゃあ私が猫だったら嫌だった?)」

「別に。どっちでも雪は雪だろ」

「…わふん(…てかなんで言葉わかるの普通に)」

「言いそうなことだからわかる。その顔見てりゃな」



当たり前に意思疎通ができている神田を、ついまじまじと見つめてしまう。
驚きはしたが人語で伝えようがない今、思いが伝わるのは嬉しいもの。



「♪」

「…んだよ」



体を傾けて、椅子越しの神田へとぴたりと身を寄せる。
柔らかい毛皮を押し当てられ怪訝な顔をしつつ、神田も離れようとはしなかった。

ふわふわの毛並みは、柔らかい髪に顔を埋めた時のことを思い出させる。
明け方にベッドの中で目覚めた時、真っ先に感じる腕に抱いた彼女の温もり。
肌の柔らかさと、シーツに散らばる髪の質感。
それらを思い出しながら、伸びた手は柔らかい毛並みを撫でていた。

気持ち良さそうに目を瞑り、ぱさりぱさりと尾が揺れる。
人の姿でもなく、世間一般に言う愛玩動物と見做されるような動物の姿でもない。
立派な体格にきめ細やかな毛並み。
ぴんと形良く立つ耳に凛とした鼻先と鋭い金瞳。
凛々しくもある高貴な獣だ。

なのに怪訝に寄せていた眉間の皺が取れてしまうのは、獣相手に愛らしいと思ってしまうのは、やはり雪は雪だからだ。
不可抗力というもの。

高く青い空から舞い込む、冷たい冬の風。



「…寒いからもっと引っ付いてろ。その姿なら暖代わりになる」

「くふ?…わふん」



本音は寒さなど気にしていないが、ぼそりと告げてみる。
そんな神田の言葉に、仕方ないなぁと言わんばかりの顔で雪が擦り寄る。
背後では揺れている尾が見えて、満更でもない癖にと思いつつ言うのは止めた。

身を寄せ合うは人と獣。
生まれ出る空気は暖かい。
それを野暮な言葉一つで壊したくはないと思った。

グラスに残っている液体を、ゆっくりと口に含み飲み干す。






"偶には一人じゃなく、誰かと酌み交わしてみなさいな。一人飲みより楽しいわよ"






ふと神田が思い出したのは、ジェリーの言葉。

成程、確かに。

ティエドールと酒を酌み交わした時は、特別な意味があった。
今ここには目的も意味もない。

それが何より特別なことのように思えたのだ。









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