My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「犬の体に酒がどう作用するかもわかんねぇし、もうやめとけ」
「わふ…」
「なんでそこで首横に振るんだよ。お前そんな酒好きだったか」
人並みには好むし、美味しいとも感じられる。
しかしよく飲み会を開く科学班や豪酒なクロス程、酒好きという訳ではない。
それでも神田の制止を拒んだのは、こんな機会早々ないと思ったからだ。
(ユウと色んなこと、一緒にしてみたい。一緒の時間を共有したいんだもん)
その思いは、ルベリエの狗となって更に強さを増した。
いくら第二使徒という教団にとって貴重な人材であっても、神田が彼らの駒だということは変わりない。
いつかは聖戦で利用されるだけ利用され、利用価値がないと思われれば捨てられるかもしれない。
危うい立場なのは雪だけではない。
それは恐らく神田も同じ。
そう悟れば、他人が見れば普通の出来事でも雪には意味のある出来事へと変わった。
ひとつひとつ大切に噛み締めていたい。
それは決して、お互いの終わりを悟ったからではない。
お互いの存在の大切さを実感したからだ。
「きゅーん…」
机に伏せたまま、上目遣いに乞い鳴く。
そこに甘えた雪の姿を連想させて、神田はぐっと言葉を詰まらせた。
まさか獣相手に心揺さぶられる日が来ようとは。
納得いかないが、心ばかりは意志だけでどうにかなるものではない。
「チッ、少しだけだぞ」
「! わぅんっ」
渋々了承すれば、ぱっと上がる顔にぶんっと尾が大きく揺れる。
なんともわかり易い感情表現だ。
「俺が犬派でよかったな」
「くふ?(犬派?)………」
「なんだその顔」
グラスに再び洋酒を注いでやれば、嘘だと言わんばかりの目で見返される。
犬派だ猫派だ、そんな話は一度もしたことはないのに、何故心外そうな顔で見られなければならないのか。
「尻尾振って寄って来んのはうざいが、気紛れに寄って来んのはもっとうざい。お前みたいに感情表現が一直線な分、犬の方が従順だ。扱い易い」
「くふん…(どっかの焔の錬金術師と同じこと言ってる…)」
淡々と告げる神田に嘘は見受けられない。
元々動物に興味はないだろうが、敢えて言うならば、と言った所だろうか。
なんとも考え方が、某国家錬金術師と被る所がある。