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My important place【D.Gray-man】

第45章 10/31Halloween(番外編)



「監視野郎には、拘束以外何もされなかっただろうな」

「……わふ」

「なんだその間は」



疑り深い目で見てくる神田に、ふるふると首を横に振る。
頭を踏み付けられたり尾を札で痛め付けられたりしたが、狼である今の雪では説明のしようがない。

と言い訳をして黙っておくことにした。
悪い空気を生むだけだ。



「わぅん?」

「ああ、それはこう使うんだよ」



それよりも、と。
たしり、と前足で机を叩いて長い鼻先をライムに向ける。
一連の動作だけで問いかけの内容を汲み取る神田は、やはり洞察力の高い人間だと言えよう。
獣になってから関わってきた人間の中で一番話し易い相手だと、櫛切りにされたライムを手に取る神田を見ながら雪は頷いた。

ライムを齧り、グラスに入った洋酒をあおる。
最後に岩塩を一摘まみ手に取り、ぺろりと舐め取って終了。
どうやらそれが神田の好む飲み方らしい。
蕎麦以外の食に関心がある神田を見たことがなかったから、雪も強い興味が湧いた。



「わぅっ(私もそれしたいっ)」

「やめとけ。慣れないときついぞ」

「くふん、ふんっ」

「…はぁ。少しだけだからな」



ぶんぶんと首を横に振れば、根負けした神田が飲み易いようにグラスを傾けてくれる。
見よう見まねでライムを一齧り。
口の中に広がる酸っぱさに顔を顰めながらも、グラスの中の液体を器用に舌で掬い飲み込んだ。

と。



「ふぐっ!?」

「ほらみろ」



岩塩を舐め取る前に、ぐわんっと頭を揺さぶられるような衝撃。
口の中に一気に広がる強いアルコールと焼けるような熱さ。
思わず机にぺたんと顎を乗せて伏せてしまう。



「言わんこっちゃねぇ。水飲め」



チェイサーの水を差し出され一気に飲み干す。
それでも簡単に強い酒が抜けるはずもなく、机に伏せたまま、くふんっと雪は空気を吐き出した。

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