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My important place【D.Gray-man】

第45章 10/31Halloween(番外編)



鼻先を胸元に押し付けて充満する、親しんだ神田の匂い。
良い香りかと問われれば、きっと頷けはしない。
草木の匂いに混じる鉄や微かな血の匂いは、六幻を手に戦闘に日々埋もれる神田に自然と染み付いたものなのだろう。
それでも安心するのは、やはり彼の匂いだからだ。



「ったく…本当に犬っころみたいだな」



視界の隅に映り込む跳ねる尾を目にして、神田は微かに笑みを零した。
雪は本来、猪突猛進するようなタイプではない。
甘えたい時も触れ合いたい時も、照れた様子でさり気なく主張してくる。

獣に変わってその理性が薄れたのか、真っ直ぐに感情を伝えてくる行為は神田にとって悪いものではなかった。
笑みが零れるくらいには、愛らしい。



「…?」



そんな神田に対し、いっぱいに彼の匂いを吸い込みながら、雪の鋭い嗅覚は混じるアルコールの匂いを捉えた。



「わふっ」

「あ?…やっと満足したか」



ぱっと顔を離して身を退く雪に、溜息混じりに神田も体を起こす。
すんすんと空気中を嗅げばやはり、アルコールの匂いが混じっている。
辿るように鼻を鳴らせば、匂いの元を机の上に見つけた。

中庭で一人酒でもしていたのか。
琥珀色の液体が入った瓶に、グラスが二つ。



(二つ?)



神田一人しかいないのに、何故二つなのか。
きゅうん?と雪は不思議そうに首を傾げた。



「なんだ」

「くふんっ」



立ち上がり椅子を起こす神田の足に、前足でたしりと触れる。
見下ろしてくる視線を受け止めて、机の上に顔を向ければ、ああと神田は理解したように頷いた。



「酒飲んでたんだよ」

「わぅん?(一人で?)」

「…仕方なくな」



再び椅子に腰掛けた神田が、机にセットされていた隣の椅子を引く。
そこに座れと言っているのだろう。
軽い身のこなしで飛び乗れば、雪の目にしっかりと机の上のものが映り込んだ。

四角柱型の洋酒の瓶が一つと、手頃なグラスが二つ。
ライムや岩塩、ナッツ類のつまみも見える。
どうやら本当に、此処で酒を飲んでいたらしい。

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