My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「退け!テメェと馴れ合うつもりはねぇんだよ、懐くなッ」
「きゃふ!?(えぇ!?)」
上半身を起こした神田の手で顎を掴まれ、押し返される。
加減のない力は、それだけ拒絶している証拠。
気付いてくれたと思ったが、どうやらそれは雪の勘違いだったらしい。
「わぅっ!?(気付いた訳じゃないの!?)」
「煩ぇ耳元で鳴くな喧しい!その鎖がいけ好かなかっただけだ、余計なことを思い出させんだよッ」
「わんっ!わふ!(その連想してるものが目の前の私なんだって!私!月城雪!)」
「知るかテメェの主張なんて。いいからさっさとそこ退け!」
「おお…これはこれは」
ぎゃんぎゃんと言い合う神田と雪を物珍しそうに傍観しながら、トクサは感心気味に頷いた。
言葉は伝わっていないはずなのに、傍から見れば会話しているようにも見える。
なんとも不可思議で滑稽な光景だ。
「退かねぇなら顎砕くぞ犬っころ」
「ッ!?」
みしり、と顎を掴む神田の手が力を増す。
至近距離でドスを利かせて睨んでくる様は、まるでそちらが獣のような猛獣の眼。
ビクついた雪の体は尾を縮ませ、思わず後退ろうとしてしまう。
しかし。
(ユウのこんな姿なんて、今更だし…っ)
想いが通じ合ってから尚、更に深まった神田との仲。
だからこそ、冷たい拒絶にショックは感じたが今更だ。
鬼のように冷たく、猛獣のように手荒な神田とは、昔から嫌という程触れ合ってきた。
一度や二度、今更拒絶されたくらいでへこたれる性格ではない。
「う~…ぐるる…」
顎を掴まれた口が戦慄く。
微かに開き牙を剥き出しに、獣は低く唸り上げた。
「がぅうッ!」
「あ?」
顎を掴む手から逃れるように、顔を捻り後退る。
そのまま後退するかと思いきや、解放された口を大きく開いて、雪はばくんっと食らい付いた。
目の前の神田の手に。
「おお」
予想外の行動に、思わずトクサも細い目を見開いた。