My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「何するんですか、使徒様。相手はただの動物だと言ったでしょう。可哀想に」
「はっ。その動物に大袈裟な鎖繋げて虐めてんのは何処のどいつだ」
「虐めじゃないです、躾です。いいからその足退けて下さい」
「きゅふ…っ(何…っ)」
尾への痛みは続いている。
芝の上に倒れ込んだまま、一体何事かと振り返った雪の金瞳に映ったもの。
それは椅子に座ったままの神田の足が、足止めするかのように雪の長い尾をしっかりと踏み付けている様だった。
思わず目を剥く。
動物虐待とも取れるその動作は、凡そ動物に向けるような態度ではない。
人だけでなく、動物に対しても彼は暴君なのだろうか。
流石としか言いようがない。
「気に入らねぇ」
「はい?」
「見てると苛々すんだよ、その鎖。外せ今すぐ」
「わふ…?」
顔を顰めて放った神田の言葉に、驚いたのはトクサだけではなかった。
神田は動物愛護などの心は持ち得ていない人物だ。
なのに止めろと言う理由は、考えれば一つしか思い浮かばない。
(気付いてくれた…!?)
狼の正体に気付いてくれたのか。
嬉しさで飛び起きた雪は、尾を踏まれたことなど吹き飛ぶ勢いで神田の足元に駆け寄った。
「わぅっ!」
「は?待っ…!」
今度はその動作を止めることができなかった。
驚きに満ちる神田の顔を視界に入れたまま、飛ぶようにして獣の体は椅子の上へと跳び上がった。
ばふんっとぶつかる大きな体。
咄嗟に受け身の態勢は取ったものの、神田は椅子に座っている身。
そのまま体重を支えられず、椅子は後方へと背凭れから倒れ込んだ。
「おっと」
おやおや、とトクサが見守る中、椅子諸共芝の上に転がった神田の上には、圧し掛かっている狼の体。
「っ…テメ…!」
「きゅふん…っ」
仰向けに転がった神田の視界を覆ったのは、真っ青な冬の空を背景に鼻先を押し付けてくる狼の顔。
ぶんぶんと尾を千切れんばかりに振ってくる所、襲い掛かってるつもりではないのだろう。
しかし神田の顔は一気に不機嫌なものへと変わってしまった。