My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「鴉のにーちゃん、なんでわかんのっ?」
「なに、簡単なことですよ。我ら鴉は"気"で相手を探ることができます。監視として彼女についている身ですから、月城雪の"気"は慣れ親しんでいる。覚えがありますよ、その私に嫌悪感を抱くような刺々しい"気"は」
にこり。
向ける言葉と浮かべる表情に違和感を覚える。
まるでずれが生じているような、奇妙な違和感。
(やっぱり苦手だ…)
あからさまに一線引いて見下ろしてくる。
そんなトクサの監視としての目は、居心地が悪い。
「まぁ、その見慣れた童貞セーターを着てるのも理由の一つなんですがね」
「!?(忘れてた!)」
うふ、と笑って指差すトクサに、雪は自身の体を見下ろしぎょっとした。
確かにそこには、多少ボロボロになりつつも辛うじて身に纏っているセーターが。
これだけは引き裂かれずに残っていたらしい。
「どーてーセーター…?ってなんだ?」
「ああ、それはですね使徒様───」
「わうっ!」
「…やめておきましょう、御犬様に噛み付かれそうなので」
怖い怖い、と言いながら軽く両手を挙げて笑う。
そんなトクサを睨み付ければ、自然と口元からぐるる、と呻り声が上がった。
「おっと。本当に獣に成り下がってしまったようですねぇ」
「なんで月城雪が獣なんかに…先程から妙に周りが騒がしいことと関係があって?」
「さぁ、それは私にもわかり兼ねますが…彼女の監視役である身。このまま獣の月城を放っておくこともできません。よって、」
ごそりと懐に手を入れて笑うトクサを前にして、五感で察知した嫌な気配。
咄嗟に一歩跳ねるようにして雪が下がると。
「犬は繋いでおかないと」
「!(やっぱり!)」
ふふ、と笑ってトクサが懐から取り出したのは鎖。
独房で繋がれた鎖と同じ。
鴉の印が刻まれたそれに、ゾゾッと雪は嫌悪感を露わにした。
考える余裕もない。
くるりと反転して、そのままに。
「雪ねーちゃ───あっ!」
ティモシーの声も待たず脱兎の如く逃げ出した。
兎ではなく、狼だが。