My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「なぁってばー!ねーちゃん!」
「きゃん!(いーやー!)」
首に抱き付いて離れようとせず、ぐいぐいと踏ん張るティモシー。
これまた同様、首を横に振ってぐいぐいと拒否する雪。
そんな押し問答を繰り返すこと約30秒。
(こんな所で騒いでたら、また変な輩に見つかっちゃう…!)
狼である雪なら、簡単にティモシーの力など振り払える。
それができずにいたのは、少年の素直な遊び心への罪悪感が残っていたため。
しかしここで甘さを向けては、また何かしら被害に合うかもしれない。
アレンを見つけるか、自室に閉じこもるかしなければ。
そう決意を込めて、雪が両手両足を踏ん張った時。
「───!」
鋭い狼の嗅覚が、知った匂いを捉えた。
「おや?」
同時に背後から届いた声に、ビクリと体が硬直する。
知った匂いが濃さを増す。
それは匂いを纏った者の接近を表していた。
「なんですの?」
「いえ。凄く気になるものを見掛けまして」
「あっ」
知った男女の声。
すると雪の首にしがみ付いていたティモシーもまた、その面子に気付いたらしい。
声を上げてぱちりと少年の猫目が瞬いた。
「鴉のにーちゃん達っ」
(や っ ぱ り…!)
あっけらかんと少年が口にした名に、がくりと顔を項垂れる。
今恐らく一番会いたくない人物。
それが背後にいることへの確信に。
「この子供は確か…」
「新しい使徒様ですよ。テワクとマラダオが護衛した先で発見したイノセンスでしょう?」
「お、憶えてますわ!それくらい…っ」
「オレにはティモシー・ハーストって名前があるんだ。ちゃんと名前で呼べよっ」
「おや。使徒様も我らを"鴉"と呼んでいるではありませんか。同じではないのですか?」
「そ、それは…」
易々と言い負かされ押し黙る。
そんなティモシーが見つめる先を追って振り返れば、案の定。
雪の目に映ったのは、緋装束姿の男女が二人。
監視役であるトクサと、サードエクソシストの中の紅一点、テワクだった。