My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「なんでそんなに嫌がんだよ…皆」
頑なに顔を背けて拒否の意思表示をしていれば、しゅんとしたティモシーの声が届く。
恐る恐る片目を開けて雪が見たものは、俯き悲しげな表情を浮かべるティモシーだった。
「ただハロウィンを楽しもうって言ってるだけじゃんか…」
「………」
幼い少年の素直な気持ち。
それには罪悪感が湧くが、如何せん方法は若干間違っていると思う。
しかし今それを、雪がティモシーに説くことはできない。
言葉で伝える方法が見つからない。
「それだけなのに……エミリアも仕事で、誘えねーし…」
くすん、とティモシーの目尻に微かな雫が浮かぶ。
どんなに怪盗Gとして大人を欺き、エクソシストとしてAKUMAと戦っていても、ティモシーはまだ9歳の子供。
いつもわんぱくで元気な姿を見せているが、本心は入団したばかりの教団に、心細さもあるのかもしれない。
同じ孤児院の家族であるエミリアの名を出すティモシーに、雪も自然と尾をヘタらせた。
ぽろりと頬を伝う小さな雫。
拭いたくても手は使えない。
顔を寄せて様子を伺う。
鼻先に濡れた雫が触れ、気付けば涙に舌を伸ばしていた。
「ん…っ…はは、くすぐってー」
「わぅっ」
「…ねーちゃん、励ましてくれてんの?」
「わふっわうん!」
言葉は通じないが、態度で伝わるものはある。
意外にも舌先で舐める行為に抵抗はなく、獣化してる自分にまずいなぁと思いつつもぱさりと尾を一振りすれば、忽ちにティモシーは涙を止めた。
「そっか。雪ねーちゃん優しいな…あんがと」
ごしごしと服の袖で涙を拭い、八重歯を見せて笑う。
ティモシーのいつもの顔に雪も自然と口元が緩む。
が。
「うッし!じゃあ菓子強奪に行こーぜ!」
「きゃうん!?(ってまだ諦めてなかったの!?)」
少年の闘志はこれっぽっちも燃え尽きてなどいなかった。