My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「………」
「何ってば、ラビ」
「…なってる」
「え?」
「本当に、犬面になってる」
「は?」
ラビが驚きで指差した先は、雪の口元。
はっとした雪が触れれば、今度は両手で覆い隠すことができなかった。
にょきりと伸びた口元は、狼のそれと同じ。
柔らかい毛に包まれた尖った大きな口に、変わっていたからだ。
「わうんっ!?」
その声でさえも。
大きく横に裂けた口から漏れた悲鳴は、獣の鳴き声そのもの。
忽ちに目の前の三人の顔が、ぎょっとしたものへと変わった。
「お…おいおい、マジかよ…」
「雪さ……体、が…」
「………そういえば、そうでした」
「そういえばって!?なんさホクロ二つ!」
目の前の雪の姿が、ざわざわと気配立ち変貌していく。
逆立つ髪は背中を這うようにして広がり、忽ちに体全体を覆った。
伸びる鼻先、彫の深さが増す目元、両手を床につけば辛うじて人の形を保っていた指先も、肉球を備えた獣のものへと変わる。
あまりの大きな変貌にラビとアレンが言葉を失う中、額に手を当てたリンクは思い出したように呟いた。
「人狼は人と狼が融合したような姿が多く資料に記されていますが、狼本来の姿へ変化する人間のこともまた、"人狼"と呼ばれていたと記載されていました」
「って、ことはつまり…」
「今の姿もまた、人狼と同じものです」
「人狼って…雪さん、本当に全部狼になっちゃいましたよ!?」
「心は人間ですから、問題ありません」
「いやいや!問題大アリさ!」
アレンとラビが凝視する先。
そこには瞬く間に変貌を遂げた、犬より遥かに大きな体で四つん這いに立つ、立派な毛並みの狼が存在していた。
足元には変貌の際に裂けてしまったカットソーやタイツが、無残な切れ端となり転がっている。
一見して見事な狼としか思えない。
「……雪、さん…?」
本当に雪で在ったのか。
それさえも疑問に思ってしまう程の立派な獣の姿。
しかし確かに目の前で、雪の体が変貌する様を見た。
恐る恐るアレンが一歩歩み寄り名を呼べば、顔を上げた獣の金瞳が彼を捉えた。