My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「…変って、笑わない?」
恐る恐る問い掛けてくるその真意は、心を許してくれている証か。
「笑いません」
はい、と即答とも言える返事を向けるアレンに、暫く沈黙を作った後、雪は恐る恐る口元の両手を離した。
アレン、ラビ、リンクの三人の視線が集中する。
獣の手が離れ、見えた雪の顔。
そこには確かに人にはないものが存在していた。
「「…ぷっ」」
「!? 笑った!笑わないって言ったのに!」
視界に"それ"を映した途端、軽く吹き出すアレンとラビにショックを受けた雪が一気に涙ぐむ。
「い、いえ!違うんです雪さん!予想と違ってたからつい…!」
「全っ然狼っぽくねぇってか、寧ろ可愛いんだけどソレ」
必死にフォローするアレンとは正反対に、けらけらと笑うラビがちょんっと"それ"を摘まむ。
「確かに狼にあるべきものだよな」
"それ"は雪の頬に控えめに生えている、数本の"髭"。
成人男性の口元に生えるそれではなく、獣が生やすそれに酷使したものだった。
見た目には問題などなし。
コアなコスプレくらいにしか見えないだろう。
「貴女が思っているより酷いものにはなってませんよ」
懐から取り出した手鏡を見せるリンクに、ぱちりと雪の目が瞬く。
食い入るように鏡の中の自分の姿を見つめると、やっとヘタっていた尾がゆらりと持ち上がった。
「ょ…よかった…」
「犬面な雪も見てみたい気はしたけどなー」
「冗談。絶対やだよ。それならラビみたいに全部狼になった方がマシ」
「だーかーら、オレも全部野菜なんかになってねぇって。顔はこんなんだけ…ど………雪?」
「何?」
ポリポリと南瓜の固い皮膚を掻いていたラビの指が止まる。
三角にくり抜かれているというのに、何故か表情豊かに伝わるラビの目は、驚きに満ちていた。