My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
異変は耳と尾だけではなかった。
顔を覆う両手は柔らかい産毛で覆われ、爪先は鋭く鉤爪のように尖っている。
「これって…」
「人狼(ウェアウルフ)です。猿ではありません」
「狼人間ってことさ?」
「ええ」
まじまじと見てくる三人の視線を感じつつも、雪は顔を隠したまま目を合わせようとしない。
「雪さん、大丈夫ですか?どこか具合でも悪くなりました?」
そこに不安を抱いたアレンが、真っ先に問い掛けた。
しかし応えは、ふるふると首を横に振られて返される。
「なら顔を見せてもらえませんか?」
しかしこれまた、首を横に拒否された。
「さっきの勢いはどうしたんさ。オレの南瓜に比べれば、人狼なんて可愛いもんだろ」
「………南瓜の方がよかった」
(((喋った)))
まさか口が利けなくなっていたのではなかろうか、という疑問は解消された。
南瓜頭へと変わってしまったラビの不憫さに勝るものは、確かにないと言えよう。
しかしラビの言葉に弱々しく返す雪の声は、単なる言い訳には聞こえない。
「なんで野菜の方がいいんさ。生き物のがまだマシだろ」
それでも野菜代表としてここは譲れないところ。
きっぱり返すラビに、おずおずと少しだけ雪の両手が下がる。
見えたのは、以前と変わらぬ雪の目元。
ただ東洋人本来の暗い瞳は、鮮やかな金瞳へと変わっていた。
アレンがノアの目と勘違いしたのは、この所為だったらしい。
「南瓜の方がマシだよ。だって全部南瓜でしょ」
「…どういう意味さソレ」
「私のは中途半端だもん…半端な方がみっともない」
「半端?」
「人狼は人と狼の両面を備えた獣人です。半狼半人の姿が定番とされています。見ての通り、月城の体も人と狼が融合したようなもの。だから半端と言うのでしょう」
「それならオレだって超半端だけど…」
体は人のまま、顔だけ南瓜頭。
なんとも滑稽なのはこちらではいかと、真面目トーンで呟くラビに、尚も雪は首を横に振った。