My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「覚えてねぇって言う割には、しっかり貰って来てんじゃん。お菓子」
ラビが指差したのは、ティモシーが腕にかけているバスケット。
その中には色とりどりの美味しそうなクッキーが、山程詰められていた。
南瓜に骸骨に猫に蝙蝠。
なんとも凝った形のハロウィン用クッキーが、香ばしい匂いを漂わせている。
「あ、これ?これはジェリー料理長に作ってもらったんだよ。皆がハロウィンを覚えてねーんなら、これ配って思い出させりゃいいって」
「成程、お菓子を使った宣伝ですね。悪くないと思います」
「良い匂いだなぁ…美味しそう」
「フーン。南瓜味のクッキーか。見た目も中身も凝ってんなぁ」
とん、と机の中央に置かれたバスケットの中を、皆で覗き込む。
食欲をそそる香ばしいバターの香り。
アレンを筆頭につい手が伸びて一口齧れば、さくさくと小気味良い音を立ててほろりと口の中で崩れる。
舌の上に広がるは、ほのかな甘い南瓜の味。
流石教団一の料理の腕前を持つ男。
否、オカマ。
普段の料理だけでなく菓子作りも、食べる者を呻らせる力を持っている。
「ジェリーさんも素敵なことを思い付きますね」
美味しいお菓子と共に思い出せば、こんな行事に参加してみるのも悪くないと思える。
優しい味のクッキーを頬張りながら笑顔を浮かべるアレンに、ティモシーも嬉しそうに笑い返した。
「だろっ?コムイ室長も手伝ってくれてさ!」
「「「ぶふぉッ!」」」
がしかし。
続けて笑顔で出された名を耳にした途端、リンクを除くクッキーを頬張っていた全員が噴き出した。
「げほ…っ…ぃ、今なんて…」
「え…このクッキー、コムイさんが関与してるんですか…っ?」
「ぅ…っぉえ…!」
「何やってんの?あんちゃん達」
一斉に顔を青くし、咥内のクッキーの残骸を全て吐き出す。
ラビに至っては、口の中に指を突っ込んで胃袋の中を吐き出そうとまでしている始末。
一体何事か。