My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
"ごめんなさい"
檻の中から解放された雪と対面した際に、最初にアレンが向けたのは謝罪の言葉だった。
その一言を重々しく吐き出しながら、雪を直視せずに白い頭を下げていた。
何故謝るのと雪が問えば、アレンは明確な答えを出さなかった。
出せなかった、というのが正しいのだろう。
同じノアメモリー保持者であることの罪悪感。
雪の異変に気付けなかったことの責任感。
エクソシストとして、また人として、間に生まれる葛藤。
今の雪に、今のアレンが向けるべき顔。
アレン自身が、それを見出せずにいた結果だ。
「あれ。雪さん朝食スイーツないんですね。なんなら僕のプリン食べます?」
「え?あ、でも。アレンの分がなくなっちゃうんじゃ…」
「僕は後6個ありますから。大丈夫です」
にこにこと笑ってプリンを差し出してくるアレンに、思わず受け取ってしまう。
眉間に溝を作り難しい顔をしていたのは、檻から解放された雪が初めて対面した時だけ。
次の日から、こうしてアレンはいつものように接してくれるようになった。
(やっぱりアレンは優しいな…)
きっとノアメモリーを保持する者同士でなかったとしても、アレンは雪にこうして笑顔を向けてくれたのだろう。
それがわかるから、些細な笑顔一つにも彼の持つ暖かい優しさを感じる。
「ありがとう」
「いいえ」
「……ねぇ、アレン」
「はい?」
それと同じに、浮かぶ疑惑。
「あの、さ」
あの時、パリで雪が発作的にノア化した時。
耳にした「オカエリ」という声は、誰のものだったのか。
「あの…」
アレンの声に似ているようにも聴こえた。
もしかしたらあれは、アレンの声だったのか。
そうだとすれば、何故そのことについて何も触れないのか。
コムイにノア化した経緯を伝えた時、彼はアレンのことを口にしなかった。
となると雪にだけではなく、教団にもアレンは自身のノアのことを黙秘しているのだろう。
隠す理由があるならば、簡単には教えてくれはしないはず。
そしてそれを穿り返すことは、決して良い結果を生みはしない。
それでも知りたかった。