My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「では私はこれで」
「あれ、飯一緒しねぇの?」
「誰が共に食事など…いえ。私は別件がありますので。残念ですが」
(…今、絶対カチンとくること言ったよなコイツ)
(いつものことだから。気にしないで)
食堂に着くなり、にこやかな笑顔で背を向け去っていく。
そんなトクサを引き攣った顔で見送るラビの肩を、ぽんと雪は労うように叩いた。
気持ちはわかるが、ここでまた喧嘩しても無意味なだけだ。
離れていく緋装束の背中。
トクサを見送るリンクの表情に、些か陰りがあることに気付く者はいなかった。
「雪さんも大変ですね。あんな癖のある中央庁の監視が付くなんて」
「ってかさ、中央庁ってなんで一癖も二癖もある奴ばっかなんさ?なぁ、ホクロ二つ」
「…だからその名で呼ぶなと何度言ったら聞いてくれるんですか、貴方は」
朝食を取りながら深々と溜息を零すアレンは、身をもって感じているのか。
その溜息の原因であるアレンの監視役へとラビが目線を寄越せば、眉間に皺を寄せつつリンクは問いには応えなかった。
「大体、ホクロ二つと呼ぶならばトクサ達も同じでしょう。何故彼らはそう呼ばないんですか」
「そりゃ同じあだ名なんて区別つかねぇだろ?"ホクロ二つ1号"なんて呼べねぇしー」
「私達はロボットですか」
トクサとは相性の悪さを見せるラビだが、リンクとの間には尖った空気はない。
最初こそ規律に厳しく、正にルベリエの部下そのものといった姿勢を見せていたリンクだったが、最近では砕けた話もするようになった。
それは常に傍にいるアレンのお陰か、黒の教団の面々と関わっているお陰か。
(トクサもそのうち丸くなってくれればいいけど…)
ぼんやりと二人を傍観しながら、ふと視線をずらせばぱちりと目が合う。
大量の料理を前に食事をしていたアレンと。
「んく。なんですか?」
「…ううん」
ごくんと、口一杯に頬張っていたバーガーを飲み込んで、きょとんと首を傾げる。
ラビ同様、以前と変わらない態度のアレンに雪は首を横に振った。
変わらないが、しかし変わってしまったこともある。
アレンは自分と同じ、ノアメモリーを保持している者だと知ってしまった。
だがそのことについて、彼と詳しく言葉は交えていない。