My important place【D.Gray-man】
第44章 水魚の詩(うた)
「アルマって…あの、ALMA?」
「ああ。俺がこの手で壊した。一番傷付けちゃいけなかったものを、ズタズタに斬り裂いた。体と…その心も」
蘇る記憶。
この独房と同じに、錆びた鉄の臭いと冷たいカルキ臭に混じる、常に傍にあった血の香り。
そんな暗いアジア地下研究所で起きた悲劇だった。
「アルマは…太陽みたいな奴だった。馬鹿みたいに真っ直ぐで、馬鹿みたいにお人好しで、馬鹿みたいにお節介で。俺より周りに溶け込むのが上手い奴だから。使徒計画の研究員連中との距離も近くて、よく笑い合っていた」
それが最初は嫌いだった。
いつもヘラヘラ馬鹿みたいに笑う、アルマのことが。
なんでこんな暗い研究所で辛い実験を重ねているのに、笑っていられるんだと心の中でよく悪態を突いていた。
だがそれは、俺が気付けなかっただけだ。
アルマだって俺と同じ第二使徒だった。
その立場での苦しみも辛さも抱えていたのに。
"ユウ、ぼくたち友達だよねっ"
それでも、俺の前では笑顔を浮かべて歩み寄ろうとしていた。
そんなことにも気付かなかった、俺は頭の悪いガキだ。