My important place【D.Gray-man】
第44章 水魚の詩(うた)
「うう…酷いよ。私から息子を取り上げるなんて…っ」
「一ヶ月の長期任務にでも行ってると思えばいいでしょう」
どんなに拷問染みた処罰より、愛弟子に会えないことの方がティエドールにはダメージが大きい。
それを知っていたからこその案だったが、これではまるで幼い子供を躾けるかのような罰だ。
つい呆れてしまう。
(全く…僕も甘いんだろうな)
コムイ自身も重々理解はしていた。
酷な選択を選べないのは、やはり彼らエクソシストを人柱としては見られない所為か。
聖戦の道具などではない。
エクソシストとしての価値を見定めつつも、命も重んじていかなければ。
それがコムイの選んだ道だ。
(結局はこうなるってことか)
ティエドールに上手く乗せられずとも、結局は同じような方法を取っていたかもしれない。
ルベリエのような道は歩めない。
否。
歩まぬ為に、此処にいるのだ。
「そういえば、元帥」
ふぅと息をついて、頭を切り替える。
めそめそと項垂れるティエドールに、ふとコムイは問い掛けた。
「ぅう…なんだい…?」
「その映像、途中で切れてましたが。続きは?」
ティエドールに見せてもらった記録では、雪が神田にノアのことを全て打ち明ける所で終わっていた。
ブツリと切れてしまっている記録には不自然さが残る。
些細なことをなんとなく気に掛かけるコムイに対し、ティエドールは肩のゴーレムをOFFにしたまま涙を拭くと、ああとのんびり頷いた。
「電池切れでね。あそこまでしか撮れなかったんだ」