My important place【D.Gray-man】
第44章 水魚の詩(うた)
「摂食障害は体の病気じゃないわ。心の病気よ。アンタがどこまで知ってるかわからないけど、あの幼さで教団にいたんだもの。色々と抱えてたものはあるんでしょうね。…その内にアタシの料理を食べてくれるようになったけど、心の問題に関しては一切あの子は話してくれなかったわ」
少し寂しげな表情で苦笑すると、ジェリーは思い耽るように高い食堂の天井を腕を組んだまま仰いだ。
「食べられるようになったのは、美味しい料理だったからじゃない。あの子自身が自分で克服して、心が安定した結果なの。…多分ね」
「………」
「もしその兆候があるなら、今は傍にいてやんなさい。でも食べられない時は無理強いさせないこと。あの子が一番歯痒さは感じてるだろうから。見守って支えてあげることも大事な努めよ」
「……わかった」
素直にジェリーの助言を受ける。
この手の話は、ジェリーの方が的確だ。
「雪ちゃんの所に行くんでしょ?早く持ってってやんなさい。あ、でも夜這いは程々にねん」
「しねぇよっ」
相変わらずうざ絡みは止めないジェリーに、さっさとその場を去ろうとして。
ふと唐突に思い出した。
確かに料理の味は関係ないかもしれねぇが、それでも以前は克服できたジェリーの飯だ。
その方が雪が食ってくれる可能性は上がるかもしれない。
「おいジェリー」
「なぁに?まだ何かあんの?」
「もう一品だけ追加を頼む」
「え?追加って…何。スイーツでもつける?」
「いや」
あいつに食べさせたいもの。
さっきは何も思い付かなかったが。
一つ、思い出した。