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My important place【D.Gray-man】

第44章 水魚の詩(うた)



「ジェリー」

「なぁに?」

「あいつ…雪から前に飯が喉を通らなくなった時に、お前の料理で食欲が戻ったって聞いた。その時は、すぐに治ったのか」



だから尋ねてみた。
雪が食事を拒否するようになった時、どんなふうに改善したのか。
少しでもあいつの情報が知りたくて。



「………」

「おい。シカトすんな」



なのに返ってきたのはぽかんとしたマヌケ面。
何固まってんだ。



「あ、…いえ、ちょっとね。驚いちゃっただけ」



何が。



「雪ちゃんがあの時のことを話すなんてねぇ…それだけ神田に甘えてるってことよね。んふ」



にんまりと笑う所は相変わらず気持ちの悪い奴だったが、さっきとは少しだけ違う表情にも見えた。



「神田なら周りに無闇に漏らしたりしないだろうし。いいわ、教えてあげる」



カウンターの男が厨房に引っ込むのを確認して、ジェリーのサングラスの奥の目が俺に向く。



「雪ちゃんは食が細いんじゃないわ。寧ろもりもりなんでも食べてくれる良い子よぉ。出したものはちゃんと全部食べ切るし。食材を大事にしてくれる子よね」

「…知ってる」



モヤシの大食らいと似ていて違う。
並んで共に飯を食うようになってわかった。
あいつは大量に飯を食うというより、大事に飯を食う奴だ。



「でもクロス元帥に連れられて初めて挨拶した時は、口数も少なくて目線も中々合わせてくれなくて。元帥の背中から隠れながら顔だけ出してくるような子だったの。丁度アンタが教団に来た頃合いの年頃に近かったと思うわ」



俺が正式に黒の教団に入団したのは、この体が10歳の頃。
…その年頃の雪を俺は見たことがない。
クロス・マリアンの手元にいたから、触れる機会もなかったのか。

……元から俺も周りはよく見ていなかったしな、あの頃は特に。



「その時は全く私の料理も受け付けてくれなくて、最初は手を焼いたわぁ。一目で原因はわかったけど」

「なんだ、その原因ってのは」

「アノレキシアよ」

「……?」

「別名、神経性無食欲症。摂食障害よ」



難しい単語はよくわからなかったが、ジェリーが言いたいことはわかった。
つまりは拒食症みたいなもんか。

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