My important place【D.Gray-man】
第44章 水魚の詩(うた)
「ごめんね」
じっと雪の体を見渡しながら思考を巡らせていれば、近くにあった顔が更に近付く。
俺の膝に乗って少し高い位置から、こつりと重ねられる額。
「ちゃんと言うから」
しかと言葉に変えて意思表示する雪に、少しだけほっとする。
言えよ、ちゃんと。
聞く耳くらいなら幾らでも持てるから。
「もう他に体のことで隠してることはねぇな」
「んー…あ」
「なんだ。何かあんのか」
「…あのね、」
聞き零しがないように尋ねれば、額を離して考え込んだ雪の顔がぱっと上がる。
何事かと身構える。
ノアのことだって受け入れたんだ、大体のことなら受け止められる自信はあった。
「さっきユウに求められた時、つい拒んじゃったけど…気持ちはね、嬉しかったんだよ」
だが構えた俺に雪が照れを浮かべて伝えてきたのは、全く予想していなかったこと。
…さっきから俺の予想が悉く裏切られてる気がする。
「凄く吃驚したけど…凄く、気持ちよかった、から。心だけじゃなくて、ユウと体でひとつになれた気分」
照れ臭そうに小さな声で、それでもしっかり言葉に変えて伝えてくる。
俺との繋がりで感じ得た、雪の体のこと。
ふんわりと柔らかい照れ混じりな微笑みを添えて。
「………」
さっきから悉く裏切ってくる雪の言動は、どうにも俺の心を揺さ振り過ぎる。
「はぁあ…」
思わず大きな溜息が零れ落ちた。
「お前…本当……馬鹿だな」
「はい?」
少し高い位置にある雪の体。
その肩に額を乗せて預けると、丸裸な太股が視界に映り込む。
柔らかそうな肌に、羽織らせた上着の隙間からチラつく、俺が残した赤い所有物の印。
「人が我慢してるってのに、なんで煽ってくんだよ…そんなに襲われたいのか」
「………はい?」
そんな雪の肌を見ながら、俺の心を揺さ振る程の言葉と笑顔を見れば……体は、反応してしまう訳で。
…我ながら今日は耐性がない気がする。
「え…まだそんな体力あんの…っ?」
「余裕」
それもこれも雪の所為だ。