My important place【D.Gray-man】
第44章 水魚の詩(うた)
「ユウのこと、信用してないからって訳じゃないよ。万が一のことを考えて、迷惑にならないようにしてただけ」
「迷惑って…俺がそんなふうに考えると思ってんのか」
「それは……わからない、けど…でも、万が一ってのも、あるし…」
「お前………はぁ」
唖然。
からの溜息と落胆。
こいつ…。
「んっとに…なんで言わねぇんだよ。なんで一人で解決しようとするんだ。お前は」
「…ごめん」
ガキの頃から一人で教団まで家族を尋ねに来たり、誰も頼ろうとせずに生きてきたから、一人で物事を処理しようとする癖がついちまってんのか。
だからってそこまで一人で背負う必要はねぇだろ。
「こ…頃合いを見て、話そうとは思ってたんだよ」
「そういうことはすぐに言え。迷惑だなんて思わねぇし、お前の体のことなら俺の問題でもあるだろ。無駄に色々考えちまったじゃねぇか」
「…ゴムの消費とか?」
「バッカ。違ぇよッ」
「ぁたっ」
真面目な顔して阿呆なこと言うもんだから、つい力んだ指先で額を弾いていた。
体の交わりなら俺にも責任あることだろうが。
話せ、そういう大事なことは。
「そういうもん飲むと体に負担掛かるんだろ。それだけ大きな効果があって、副作用が何もない薬なんてねぇだろうが」
ゴーレムの光じゃ少し弱くて確認し難い。
近くで見えるように、雪の腰を抱いて膝に座らせる。
慌てて肩に手を置く雪の顔が、ぐっと近付いた。
「いつから飲んでたんだ」
「え…っと…二ヶ月前くらい?」
「体に異変は?些細なことでも言えよ」
「ん、と……ないと、思う」
「本当かよ」
「うん。大丈夫」
頭から足先まで、ざっと目を通す。
疲れた顔はしているが、具合は悪くなさそうだ。
…つーか、改めて薄着なこいつを見れば…痩せこけ過ぎだな。
いつからまともに飯食ってねぇんだ。
教団に戻ってすぐに独房に入れられただろうから、最後に飯を食ったのは…任務先のパリか。
あそこでも独房に入れられてたんだ、まともな料理はずっと口にしちゃいないんだろう。
フランス料理も食い損ねたって愚痴ってたしな…確か。