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My important place【D.Gray-man】

第44章 水魚の詩(うた)



「ったく…さっきまでガキみたいに散々泣いてた奴とは思えねぇな」

「あれは…だから、いつもあんな泣き方しないってば」



雪の手が腕に触れる。
あまりに笑顔で傍に寄ってくるから、なんとか顔の熱を冷まさせながら仕方なく顔を向けてやった。



「じゃあどんな泣き方するんだよ」

「どんなって…」

「お前、いつも堪えて我慢するだろ。まともに泣かねぇから、普段の泣き方なんて俺は知らない」



俺がローマの任務先で死んだかもしれないと思った時でさえ、必死に唇を噛み締めて涙を耐えていた。
こいつは生い立ちや今の生活の所為もあるかもしんねぇが、感情を押し殺して我慢し過ぎる所が多々ある。



「無理に泣けとは言わない。でもその涙は俺に拭かせろよ」

「…うん」



甘え下手なことは知ってる。
今まで上手く甘えられる奴がいなかったから、そんな癖が付いたんだろう。

ならもう、俺には甘えられるだろ。

顔を覆って熱を隠していた手で、雪の頬に触れる。
片手で頬を包んだまま親指で目の下をなぞれば、静かに下りてきた睫毛が爪先に触れた。
目を瞑り、俺の手の感覚に浸るかのように首を傾げて頬を摺り寄せてくる。
雪が時折見せる、甘えた仕草。



「目、更に腫れたな」

「…別の意味で泣きましたから」



そんな仕草に心惹かれたが、それ以上に目に止まったのは赤く腫れた涙の跡。
散々ガキみたいに嗚咽を出して泣いた時より悪化してる跡を指先で撫でれば、開いた暗い目がじっと見つめてくる。
主張してんのは、快楽に溺れさせたことだろうな。



「あんなに我慢して耐えなくてもよかったのに…一回しか駄目なんて、私言わないから」

「何言ってんだ、出せねぇだろ。ゴム付けてねぇのに」



何を言い出すかと思えば。
避妊具もねぇのに、んな軽率なことできるか。
そう呆れ混じりに当たり前のことを返せば、途端に雪の目が丸くなる。

そして。



「…ぷっ」

「オイ」



唐突に吹き出した。



「なんで笑ってんだ」

「いや…律儀だなぁ、って思って」



律儀って、何言ってんだよ。
当たり前だろ。
今日が危険日だったら、こんなすぐに事後処理もできない場所で中出しなんてしてみろ。
一発でアウトだろうが。

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