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My important place【D.Gray-man】

第44章 水魚の詩(うた)



モヤシが一瞬だけでもノア化した。
確信は得たが、そのことを雪には伝えなかった。
モヤシに雪のノアメモリーが触発されたとしても、話を聞く限りそれはノアの覚醒じゃない。
一時的なノア化なだけだ。
となれば…そこまで危険視するもんでもないか。
モヤシの所為で雪が覚醒する可能性は、恐らく低い。

同じノア同士、雪とモヤシの接触を教団は警戒するだろうし、あのパリでの一連の出来事は偶然の産物。
モヤシ自身も自分のノア化に気付いていなかったし、雪自身も「オカエリ」と告げてきた声がモヤシの中のノアのものだと気付いていない。

雪のこととなれば話は別だが、モヤシのことなんざどうでもいい。

あいつのノアの片鱗が、雪と同じに現れ始めている。
そのことに気付いても、俺の感情は一切動かされなかった。

俺の憎むべき対象はノアじゃない。
この"黒の教団"だ。
俺とアルマの命を道具としてしか扱わず、人として唯一残されていた記憶も根こそぎ削り取ろうとした。
それでも"あの人"の為に教団で生きる道を選んだ俺が、此処で初めて見つけられた大切なもの。
それがまた教団の手によって、鎖に繋がれ今正に潰されかけようとしている。



そんな教団に向ける慈悲なんてありはしない。



俺が教団にいる一番の理由は"あの人"に会う為だ。
千年伯爵との聖戦に勝つ為じゃない。

雪がノアだと知っても尚、奴隷にして従わせようとしたルベリエだ。
モヤシがノア化しても、なんだかんだ利用するんだろう。
死して尚、骨の髄までしゃぶり尽くして利用しようとする。
その所為で死ぬことすら俺とアルマは許されなかった。
人の命を、道徳を踏み躙る行為も、この世界では肯定される。

…やりたきゃ好きにやればいいさ。
聖戦の勝利を掴む為なら、何をしたってどうせ世界は許してくれるんだろ。






俺は許す気なんて到底ないが。

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