My important place【D.Gray-man】
第44章 水魚の詩(うた)
「別に、逸らしたりなんかしてないよ。ちょっと…恥ずかしいだけで」
「なんだよ」
「だから、恥ずかしいんだって。……女子の事情です」
だからなんだよ、女子の事情───…って。
ああ、
「月一の生理的なアレか」
女は大変だな。
「違うッ!!!」
成程と納得すれば、即座に声を荒げて否定された。
んだよ喚くな騒々しい。
「んだよ、違うのか。排らん」
「その名称は駄目!本当デリカシー皆無!」
排卵日じゃねぇのかよ。
そういう時、女は情緒不安定になるもんなんだろ。
さっきから精神ブレブレじゃねぇか、お前。
…この現状じゃ仕方ねぇだろうけど。
「別に恥ずかしがることねぇだろ、生理現象なんだし。必要なら生理用品手配してやる」
「だから違うんだって…!あり難いけど今は必要ないから!生理生理言わないでっ」
「じゃあなんだってんだよ。排ら」
「だからその名称禁止だってば!」
名称くらいで恥ずかしがんなよ。
生娘じゃあるまいし。
反発する雪に、生憎俺も退くつもりはない。
尚もしつこく問いかければ、先に根を上げたのは雪の方だった。
「もう…っ…む…胸の火傷、なの」
「…胸?」
「さっき話したでしょ。…アレンの退魔の剣を胸に受けた時に、十字の模様が浮かんで…火傷みたいな跡ができたって」
そういや言ってたな、そんなこと。
モヤシの退魔の剣が原因だってことは、気に喰わなかったが。
…そういやその現象は、モヤシがパリの任務で一瞬ノアの顔を垣間見せた時と似ている。
体を退魔の剣で貫かれて雪の額の聖痕が浮き出たのなら…やっぱりあの時、モヤシが退魔の剣をその身に受けて一瞬見せた別人のような顔は───ノアのものだったのか。