My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「彼らが有能であれば、だが」
淡々と冷たい口調で述べるマダラオに、アレンは静かに目を向けた。
突如現れ、ノアだと判断した雪を攻撃し拘束した。
雪に迷いなく手を上げたことは不快に思えたが、彼女と接点のない者なら当然としての行為かもしれない。
ノアは教団の敵。
敵意を向けるのは当然のこと。
となるとこの謎の人物は教団側の、自分達の味方となるのだろうか。
「ていうか誰ですか。君達」
問いかければ、そこには何も答えを返されなかった。
沈黙を貫くマダラオとテワクに、アレンの眉間に僅かに皺が寄る。
人の話を聞かない感じといい、あの札を操る術といい。
彼らは鴉に似ている。
中央庁の者達なのか。
(もしかして…エクソシスト?)
自分の知らない、新たなエクソシストなのか。
そんなアレンの思考を読み取ったかのように、マダラオの顔布の下の鋭い目が向く。
「我らはエクソシストではない。故にその女への一打も一時的なものだ。ノアに最も有効なのはイノセンスであるからな」
鋭く冷たい目が、アレンからその手に握られている退魔の剣へと変わる。
まるでそれで雪を殺せと言わんばかりの視線に、アレンはマダラオを睨み返した。
どうやら敵ではないようだが、味方と言える者なのかもわからない。
ただはっきりと言えるのは、彼が不快な人物だ、ということだけだった。
「…科学班を待ちます。ジジならこの結界を破ってくれるはず」
静かにそれだけ告げると、退魔の剣の発動を解いて左腕へと戻す。
そうしてマダラオの目から隠すように、アレンは壁に凭れ寝かせている雪の隣に腰を下ろした。
そっと顔色を伺う。
一向に目覚める気配のない雪だったが、確かに重度の怪我のようにはあまり見えない。
そのことに少しだけほっと、アレンは肩を下げた。
その時。
ガチャッ
ビクともしなかった孤児院の玄関口のドアノブが、音を立てて回された。