My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
そして雪に対する不安だけでなく、雪が受けるであろう教団の対処への不安もアレンは感じていた。
自分がノアとして疑いを掛けられ、周りから様々な目を向けられてきたからこそ。
不安
同情
脅威
軽蔑
嫌悪
憎悪
好意的な目を向けられたことなど一度もない。
敢えて言うなれば、ルベリエだけは自分を"道具"として、教団で利用できる物の一つとして見てきていた。
精々それだけだ。
雪もまた自分と同じような目を向けられるのだろうか。
それもノアのとしての"可能性"がある自分とは違い、あんなにはっきりとノア化した姿を目撃されてしまったのだ。
完全に"敵"と見做されてもおかしくない。
そうなってしまえば、彼女は。
「……」
彼女の命は、どうなるのだろうか。
最悪な思考が頭を掠めそうになって、アレンは固く目を瞑り追い出した。
(駄目だ)
そんなこと絶対に認められない。
誰が何を言おうとも、ノアだからと、ただそれだけで彼女の命を奪うなど。
元々ノアであったティキにさえも慈悲を向け、絶好の機会を前にしても殺すまでには至らなかったアレン。
それをティキに"甘い"と否定されたが、それでもアレンの思いは変わらなかった。
ノアであっても彼も人だ。
彼らが人間を道具にしてきたことは許せないが、だからといって殺して勝ちを得ようとは思わない。
そんなアレンの強い思いが生み出したのが、臨界点を突破した新たなイノセンス能力"退魔の剣"。
人の体は傷付けない。
滅するのはノアメモリーとAKUMAのダークマターのみ。
アレンらしい優しさを宿した剣。
なのにその剣の形状は、何故か千年伯爵の持つ大振りの剣と酷使していた。
まるで対となるかのように、白黒反転させた剣同士。
「魔道結界は内からは破れぬ。科学班を待つことだ」
暗く不安渦巻くアレンの思考を遮ったのは、後方で静かに佇み待機するマダラオの言葉だった。