My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
──バキッ!
硬い物質同士がぶつかり合う音が響く。
ガン、ゴン、と何度も何度も。
それは孤児院の玄関口から。
「くっそ開かねぇ…!」
ぜぃはぁと息荒く悪態を突いたのは神田。
「どうしたら外出られるんだコレ…ッ」
同じくはーはーと呼吸荒く、ガンと足元に退魔の剣を突き立てるのはアレン。
さっきから二人掛かりでイノセンスで何度も玄関口を叩き割ろうとしているのに、ドアは掠り一つ付かない。
ピカピカと綺麗なまま。
AKUMAは倒したのだから、もう結界から出られてもいいはずなのに。
何故か未だにアレン達は真っ暗な世界の孤児院の中に、閉じ込められていた。
「落ち着け、二人共」
「でもマリのその手の傷、早く診せないと…っ」
荒々しく呟く二人を宥めるようマリが声をかければ、肩で息をしながらアレンが振り返る。
その目は心配そうに止血の為強めに布をぐるぐると巻かれたマリの手を見て、それから傍の壁に凭れて座らせている雪へと移し変えられた。
札で体のあちこちを覆われているが、そこから見える顔はしっかりと目を瞑ったまま、起きる気配は全くない。
(雪さんの手当てだってしないと…)
そして。
彼女のことを、伝えなければならない。
アレンだけではない。
この場にいたマリを除く全員が、雪のノア化を目撃している。
なかったことになんてできないし、それはリンクが許さないだろう。
必ず上に報告すると言うはず。
そしてそれを止める理由など、どこにもない。
(でも…なんだって雪さんが…)
何故彼女なのか。
理由なんてないのだろうが、そう疑問を抱かずにはいられなかった。
もしかして自分のように、意図的に誰かにノアの宿主にでもされたのだろうか。
そんな憶測さえもアレンの頭を過ぎる。
そう理由付けていないと、不安で。
彼女は自分達にずっと本当の自分を偽り向けてきていたのか。
神田の気持ちも、アレンは少なからず理解できた。
思いの形は違えど、同じに雪のことを大切に思っていたから。
何故、そんな彼女がノアなんかに、と。