My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
無言で睨み合うアレンと神田。
やがて何か言葉を交わしたアレンが、その横を通り過ぎて孤児院へと歩いていく。
その腕の中に抱かれている雪に向けていた目を、静かにリンクは別へと変えた。
向けた先は、緋装束マントの二人組。
そのマントは普段鴉が身に纏っている緋装束に似ているようで、少し違っていた。
見覚えのない衣装。
しかし帽子と顔布を身に付けているが、合間から垣間見える髪色や聞き覚えのある声、纏う雰囲気が物語っていた。
彼らは自分の知っている人物であると。
「…テワク」
歩み寄れば、静かに向けられる二人の目。
柔らかいウェーブのかかった金の長髪の小柄な少女。
裏葉色をした右サイドだけ長く垂れた髪に、髪の隙間から揺れる数珠と羽根飾りの装飾を身に付けた男性。
間違いない。
「……マダラオ」
テワク。
マダラオ。
この二人は、自分と同じ中央庁の番犬。
同じスラム街で生き、同じ残飯を漁り、同じ夜空の下で眠りに着き、同じ道を生きようと幼き日に鴉になる決意を共にした。
リンクにとって家族同然だった者達。
「鴉のお前達が何故此処に…」
自分にはアレンを監視するという役目がある。
だからこそ中央庁には戻らず、黒の教団に身を置いている。
しかしこの二人は変わらず中央庁の犬として働いていたはず。
そんな彼らが、何故二人だけで此処にいるのか。
はっきりとその名を呼び問いかけるリンクに、テワクと呼ばれた女とマダラオと呼ばれた男は、口を閉ざしたまま。何も答えはしなかった。