My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
脅迫のように問いかける神田に、アレンもつい顔を顰めた。
「知りませんよ。僕より雪さんと付き合いが長いのは神田でしょ。僕よりもっとずっと傍にいたのも神田だ」
"君こそ知ってたんじゃないんですか"
そう問いかけたくなって、しかしアレンは口を閉ざした。
聞かずともわかる。
こんな疑問を投げかけてきてる時点で、神田は彼女の事情を知らなかったのだろう。
誰も何も知らなかったこと。
だから、こんな事態になってしまった。
お互いの間で交わされる無言の睨み。
普段よく喧嘩している二人の間で生まれる、ピリピリとした空気よりも遥かに殺伐とした空気。
しかし今はそれを止める者はいない。
いつもその間で、余所でやってくれと悲鳴を上げながら止めていた彼女は、今は気を失って拘束されている。
「…とにかく外に出ましょう。雪さんだけじゃない。マリの手も医療班に見せないといけないし、孤児院の皆も被害を受けてる。AKUMAは全て破壊したんです、これならきっともう外に出られるはず」
先に無言の威圧を止めたのはアレンだった。
静かに淡々とそう口にして、半壊した孤児院へと向かう。
周りは見渡す限り地平線も見えない真っ暗な世界。
此処を歩き続けて外に出られるとは思えない。
入ってきたのは孤児院の玄関口。
恐らく結界の入口も出口も一つ、其処だろう。
雪を抱きかかえたまま横を通り過ぎていくアレンを、神田は微動だにせず目で追いもしなかった。
眉間に皺寄せた目を地面に落として、ギリと歯を噛み合わせる。
「…っ」
無言の悪態は、レベル4との激しい攻防でできた黒い地面へと向けられた。
激しい銃弾を受け反り上がった地面の亀裂の入った瓦礫に、ガン!と一度だけ蹴りを入れる。
その後は何も目に映さず、足早にアレン同様孤児院へと向かう。
「……」
荒んだ刺々しい心。
その音を拾いながら、マリは僅かに顔を顰めた。
触れる者を全て跳ね除けるような、荒い心音。
それはまるで以前の神田に逆戻りしたかのようだったからだ。