My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「く…なんのつもりだ」
「それはこっちの台詞だ。テメェら何者だ。急に現れてあいつに手ぇ出すなんざ、一体なんのつもりなんだよ」
シュウ、と男の防御で構えた左腕に走る、生々しい大きな斬撃の痕。
六幻を突き付け低い声で返す神田に、男は微かに眉を潜めた。
「なんのつもり、だと? 敵だから攻撃した。それ以外に何がある。エクソシスト(貴様)と同じことをしたまでだ」
「……」
「あれはノアだ。貴様達の倒すべき存在だろう。何故庇い立てする」
ちらりと、男の視線が雪の体を抱くアレンに向く。
「兄様…あのノアはどうやら教団の探索部隊に所属していたようですわ。恐らく周りを欺いて解け込んでいたのでしょう」
「…成程。敵に情でも移されたか」
二人の鴉の淡々とした物言いに、神田は神経を逆撫でされる感覚に奥歯をギリと噛み締めた。
情なんかで戦うべき相手を見失ったりしない。
しかし雪に特別な感情を抱いているのも事実。
雪は自分達を欺き教団に潜り込んでいたのか。
その性格は多少なりとも知っている。
エクソシストに興味を持たず、周りに一線引いていたのはそれが原因だったのか。
不安要素はある。
しかし確定はできない、不確かなもの。
だから彼らの言葉を否定はできない。
しかし肯定もできるはずがない。
「……ざけんな」
ぼそりと神田の口から小さな悪態が漏れる。
男の目に映ったのは、殺気立った顔で睨み付けてくる真っ直ぐな眼。
「テメェらがあいつの何を知ってるってんだよ」
肯定も否定もできない。
しかし見ず知らずの他人に知ったように雪の存在を語られるのは、虫唾が走る思いだった。
自らが漏らす殺気で肌が粟立つ程に。