My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「アレン、どうした…っ雪の心音が…」
「ねーちゃん…ッなぁ、ねーちゃん大丈夫なのかよっ!?」
「…マリ…ティモシ…」
盲目のマリは雪の変化を目で捉えることはできない。
しかし心音で異変を感じ取ったのだろう。出血した手元を抑えながら、不安げな表情で傍に駆け寄ってくる。
同様にマリと同じ表情で、おろおろと雪の傍に膝を付くティモシー。
アレンは言葉を濁した。
マリにどう言えばいい。
彼女がノアだったと、そう伝えるのか?
確かに今自分の腕の中で気を失っている雪の姿は、確信たる姿だ。
しかし躊躇する。
その名を口にすべきか。
「!」
その時、静かにアレンの腕の中で雪に変化が表れた。
大きなダメージを受けた所為なのか理由は定かではないが、褐色の暗い肌が塗り変わるようにいつもの肌色に変化していく。
額の聖痕も肌に溶け込むように、スゥッと呆気なく消え去った。
もうその姿は、普段の変わりない彼女のまま。
「……」
じっと腕の中の雪を見下ろす。
ノアは自分の意思で肌や目の色を変えることができる。
額の聖痕を消すことも。
彼女のこの現象も恐らく、その一つなのだろう。
見た目はもういつもの彼女だ。
しかしだからと言って、ノアであることを取り消すことはできない。
「…ッ(駄目だ、今はそれより…っ)」
ぐっとアレンは唇を噛み締めて拳を握った。
今何より優先すべきは、負傷した彼女の体だ。