My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
顔布で、テワクが兄様と呼んだ男の表情は見えない。
けれど突き刺さるような視線と殺気に、雪は無意識に身を竦めた。
と。
「!」
はっとした。
札に意思などない。
しかし背後に感じたその気配。
その時には、雪の背後には巨大な壁を作るように宙に張り巡らされている、大量の札が存在していた。
いつの間に飛ばしたのか、その手際も見ていない。
振り返った雪の目に札が映し出されると同時に、一斉にその紙が金色へと塗り変わる。
(まずい…!)
直感で危険だと感じたその時、札は巨大な影を作り雪へと覆い被さった。
バチッと褐色の肌に閃光が走る。
「"縛"」
低い男の声を耳にした。
その上から被せられる、自分の体を纏うバチバチと強い音。
雪の体から発せられる高圧のエネルギーに札は焼かれるものの、数でそれを押し切った。
ぐぐぐ、と強い圧迫をかけるように、大量の札が雪の体を隠す程に覆い被さり取り囲む。
強い重力がかかる。
押さえつけられる力に、雪はその場から動くことさえできなかった。
「ぁ…ッ…ぅ…!」
耐えるように頭を抱え体を縮ませる雪。
バチバチと褐色の肌に纏い呻る光が、力を弱めていく。
「ま、待って下さい! 雪さん…っ!」
「ッ…!」
その状況に、驚き唖然としていたアレンと神田の意識がはっと戻った。
このままでは雪が。
そう感じた二人が駆け寄るより早く、男の口から発せられた言霊。
「"爆"」
金色の札に刻まれた"縛"という文字。
それが全て"爆"という文字に刻み変えられると、ドーム状に雪を包み込んだまま、じわりと札の内側が熱を帯びた。
瞬間。
ボフンッ!と札が覆い尽した内側で、こもった爆発音が鳴り響いた。