My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「その声…まさか……テワク…?」
謎の中央庁の護衛。
それに確信持つ顔で反応しているのは、リンク一人だけだった。
しかしその問いかけには答えず、女がばっと大きく緋装束マントの袖を振るう。
袖の中から飛び出してきたのは、リンクが扱っているものと同じ複数の札。
(あの札…っ鴉!?)
その札を扱うのは、雪が知る限りでは中央庁の特殊戦闘部隊である鴉だけ。
となると彼女もその一人なのか。
鴉の戦闘能力の高さは知っている。
咄嗟に体を起こすその雪目掛けて、無数の札は一斉に襲い掛かった。
しかし札は雪の体に張り付く前に、見えない壁に阻まれるかのようにバチバチと激しい音と光に弾き返される。
「ぁ…」
焦げ付いて散り散りになった札が、雪の周りでふわりぱらぱらと落ちていく。
パリリ、と雪の周りを纏う謎の光。
先程AKUMAを倒したエネルギーと同じものだ。
「小賢しい真似を…!」
「っ! 待てテワク!」
札が効かないと察した彼女の次の行動は早かった。
リンクの声に耳を貸さず、袖から大振りのナイフを出すと雪目掛けて一直線に駆けてゆく。
避ける暇もなく、雪は咄嗟に両腕を交差させて受けるであろう斬撃に強く目を瞑った。
バチンッ!
「ぁうッ!」
閉ざした視界。
聞こえたのは強い電撃音と女性の悲鳴。
目を開ければ、札と同じように弾かれたテワクがその場に膝を付いていた。
「こ、この…っ」
「お前では手に負えん。退け」
「兄様…!」
ザリ、とその隣に足を付ける別の声。
低く知らない声に目線を変えれば、テワクと同じ姿の護衛の男が其処に立っていた。
となると恐らく彼もまた、鴉の一人なのだろう。
ぴり、と空気が殺気立つ。