My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
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「なんで先輩だけ中に取り込まれちゃったんですかぁッ!?」
「ンなのわっかんねぇよ俺にも!」
「おいッ! 雪! 無事かーッ!?」
ガンガンと固く閉ざされたドアに拳を叩き付けるゴズとバズ。
しかしするりと水面のように体をすり抜け通したのは雪のみで、孤児院の入口はそれ以外の者を受け付けはしなかった。
「とにかくわかってんのは、これは敵が作り出した結界だってことだけだ! その"装置"になってるもんを見つけねぇと…!」
「装置…ですか?」
「ああ。結界を張ってんなら、その起動原因となるもんがあるだろ。お前らだって"それ"使って結界張ってんだろーが」
目にいっぱいの涙を溜めて見てくるバズに、ジジは呆れ混じりな顔でその肩から下げられている結界装置を指差した。
装置なり術印なり、結界を張るための痕跡は残されているはず。
この孤児院の何処かに。
「それに恐らく雪が取り込まれたのは、アレン達と同じ場所だ。エクソシスト(あいつら)の傍にいりゃ、大概は平気だろうよ」
「そうだといいんですけど…」
「おいリーバー! お前も見学してないで手伝えよ!」
「ああ、わかってる」
ジジの荒い声に手短に頷いて足を向けるリーバー。
その傍らに静かに気配を殺し立っていた、二人の緋装束マントの人物。
リーバーの護衛役である二人はそれに続くことはなく、黙って孤児院の建物をついと見上げた。
「……」
「…兄様(あにさま)」
小柄なマントの少女が、傍らに立つ同じマントの男性へと密かに声をかける。
その小さな口から発せられたのは可憐な高い声。
「この屋敷、何か妙な感じが致しますわ」
「……」
丁寧な言葉遣いで伝えられる事柄に、男は沈黙を通したまま反応を示さない。
しかし女が口にしたことは、男も同様に感じていることだった。
肌をねっとりと纏わり付くような微かな"気配"。
その気配は、なんとなく知っている。
それは自分達がこの身に宿しているものと、恐らく同じものだ。