My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
…待っ、て
ひゅ、と掠れた息を呑む。
目を疑った。
待って
待って
体中の血液が一気に冷めていく感覚。
なのにドクドクと緊張と焦りで沸き立つようにも思える。
待ってよ
これって
見慣れない、だけど確かに見たことのあるその肌に言葉は出てこない。
全身に冷や汗が浮かんだ。
まさか
「まさか…お前…ッ」
自分の思いと重なる、目の前のAKUMAの声。
顔を上げる。
雪の目に映ったのは、ガラス玉のように透き通る大きな幾つもの眼球を向けてくるAKUMAの目。
そこに鏡のように映っていたのは、褐色の肌を持つ、金眼の。
「ノ──」
「ッ!」
言わないで!
その口から発せられようとした名に、気が逆立った。
瞬間、バチバチと雪の体から放電した光が目の前のAKUMAを包み込む。
「あぎゃ…ッぁあぁああああ!!!!」
バリバリと、まるで強力な電流を浴びせられているかのような音に、悲鳴を上げるAKUMA。
忽ち機械の体はショートしたように煙を上げ、真っ黒にその肌を焦げ尽くした。
強烈な光が治まった時、その場にあったのは真っ黒に焦げ付いたAKUMAだったもの。
ずん、と膝を付いたAKUMAが、声一つ発さずその巨体を倒れ込ませる。
静寂。
「…ぁ…」
私…今、何…を…?
目の前で動かない真っ黒なAKUMAの残骸を目にして、己の褐色の掌へと移し変える。
凝視した掌では、パリパリと肌を纏う見慣れぬ光が見えた。
体がふらつく。
今、自分は何をした。
「ねーちゃん…?」
背後からかかる、恐る恐る怯えた声。
はっとした。