My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
──ィイイイン…!
耳鳴りが増す。頭が痛い。
強く増すその痛みに、雪は頭を両手で抱えると大きく背中を折り曲げた。
頭が、痛くて痛くて堪らない。
「ッ…ぁ、く…!」
バチバチと鳴る強い音と眩い光。
「ねーちゃ…!」
「く…ッ何が起こっているんだ…!」
雪を取り囲む強い電撃のような光に、まともにその姿も見えず、リンクは目元を守るように片手を翳した。
何が起きたのか。
急に雪が頭を抱えたかと思えば、強い光と摩擦音が彼女を中心に生まれた。
言葉通り、突如"生まれた"のだ。
結界装置を起動もさせず、その体から発した謎のエネルギーでAKUMAの拳を弾いた。
一体彼女に何が?
訳もわからず戸惑うリンクの目の前で、雪は強い耳鳴りと頭の痛みに襲われていた。
が、やがてふつりと。その煩い程の耳鳴りは唐突に頭の中から消えた。
「っはぁ…!…は…っ?」
荒く浅く息をつきながら、頭を押さえたまま雪は体を折り曲げ、自分の足元を見下ろしていた。
何が起こった。
知らない声がした。
知らないのに知っている声。
聞いたことのある音。
知っている感覚。
一体、これは何?
「お前…ッ!」
バチバチと激しく摩擦を上げていた音が止む。
ゆっくりと顔を上げる。
雪の目の前には、巨大な機械の体を持つAKUMA。
そのぎょろぎょろと彷徨う目が、全て自分に注がれていた。
「その…姿…」
「…?」
その姿?
「まさか…ッ」
このAKUMAは何を言っているのか。
意味がわからず見上げた巨体は、何故か次の攻撃を繰り出してはこなかった。
拳を振り下ろすことなく、こちらを戸惑うように見下ろしている。
雪の頭から辿るように体、足先へと。全身をくまなく見回すAKUMAに、雪は眉を潜めた。
一体何
その視線につられるように、雪の視線が下がる。
見えたのは白いマントの袖から覗いた、自身の細い腕。
「…え?」
褐色の肌を持つ自身の腕だった。