My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
見開いた目でレベル4がアレンを凝視する。
そんなAKUMAに薄く笑みを浮かべて笑いかけている、金色の目を宿した彼。
それはほんの一瞬のことなのに、まるで長い時間を要しているようにも思えた。
ドッ…!
「が…!」
そこに終止符を打ったのは、とある一撃。
レベル4の後頭部から刺されたそれが、砲を破壊し喉奥から突き出す。
鋭く鈍く光る刃。
日本刀の形を成した、神田の六幻。
レベル4の顔を真後ろから突き破り、それはアレンの首擦れ擦れを掠めて止まっていた。
一歩間違えれば、アレンの首をも突き刺していた状況。
それでも金色の目を宿す彼は、無表情にそれを見返しているだけだった。
感情の見えない顔で、静かに神田を見据えている。
いつものアレンとはまるで違う反応。
果たしてこれはアレンなのかと思わせる程、別人に見える。
「…ッ」
神田の額にくっきりと浮かんだのは、怒りの青筋だった。
「んの…ッ馬鹿モヤシ!!!!!」
カッとなり叫んだのはいつもの彼への罵倒。
するとアレンの手は意思を持ち、突き刺さっている退魔の剣の柄を握り込んだ。
「おぉおおお!!!」
「はぁあああ!!!」
六幻を握る神田と、退魔の剣を握るアレンの声が重なる。
それぞれの刃に串刺しにされたレベル4の体が、ぶつっと切り裂かれる。
「な、に…ッ!?」
それ以上悲鳴を上げることなく、二つのイノセンスによって白い体は縦と横に引き裂かれた。
四方に切り裂かれた体から、ビシャビシャと飛び散る大量の真っ赤なオイル。
ぶつ切りの肉片のように変わったレベル4の残骸が、血の海にボトボトと崩れ落ちる。
完全なる沈黙。
大量のAKUMAのオイルを体に浴びながら、アレンだけがずるずるとその場に座り込んだ。
「…は…っ」
「………オイ」
「…あ"?」
負傷したままの体で、荒い息をつく。
そんな神田にかけられる声。
低い声で反応すれば、座り込んでいたアレンがゆっくりと顔を上げた。
真っ黒な神田の瞳と重なったのは、銀灰色の澄んだアレンのいつもの瞳。
そこに鮮やかな金色は見えない。
「…"アレン"だって言ってんでしょ」
そう、力なく返してくる言葉もいつもの彼そのものだった。