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My important place【D.Gray-man】

第42章 因果律



「…はぁ、」


 最初に白旗を上げたのは、アレンだった。


「なんか…肩の力、抜けました」


 コキコキと軽く肩を回して、多少抜けた声を漏らす。

 目の前にいるのはレベル4と称されるAKUMA。
 以前教団本部を襲い、沢山の死者を出したAKUMAと同じレベルの悪性兵器だ。
 あの時は元帥であるクロスが決定打を打ち込んだ。
 元帥のイノセンスと結晶化したリナリーの新しいイノセンスで、なんとか破壊できた。

 しかし今此処に、クロスもリナリーもいない。

 下手すれば此処にいる者全員、全滅だってあり得る緊迫した状況。
 なのに何故、彼女の登場でこうも空気は緩むのか。

 雪は元帥程の力を持った者ではないし、そもそもエクソシストですらない。
 ファインダーとして腕は立つが、AKUMAを一体だって倒すことのできない人間。
 彼女が現れたからと言って、この状況が有利に運ぶ訳ではない。

 なのに何故かほっとする。
 余分な力が抜ける。

 それは実力や能力なんて関係ない、雪自身が持つ何か。
 自分に与えてくれる、目に見えぬ力ではないかとアレンは頬を緩めた。


「何はともあれ、雪さんの言う通りですよ、神田。相手はレベル4。僕らの小さな意地で皆を危険に曝すのは止めましょう」

「…チッ」


 深呼吸一つ。
 そうして苦笑混じりに呼びかけるアレンに、神田は一度視線を交えると呆気なくそこから外した。
 構えた六幻をレベル4に向けた時には、もう目の前の敵しか見ていなかった。

 同じく退魔の剣を構えるアレンもレベル4へと鋭い目を向ける。
 ピリピリとした空気。
 しかしもうお互いに向けられたものではないその空気に、マリは盲目の目を見張った。

 この二人の喧嘩を仲裁するだけでなく、前に進ませるとは。

 雪は口達者な訳ではない。
 二人を止めたのは、恐らく雪自身が持つ影響力。
自分より誰より、この頑固な二人を成長させる適任者は彼女なのかもしれない。


「おや。さっきよりはたのしめそうですね。ふふふふ」


 目の色が変わった二人を感じ取ったのは、レベル4も同じ。
 白い口元を歪めると、面白そうに悪魔は嗤った。

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