My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「そだっ! オレがあんちゃんに憑いたらイノセンスの力が使えるんじゃね!?」
『それは無理! 憑神がイノセンス化でけるんはAKUMAだけや』
「ええっ! そなの!?」
はっと顔を上げて名案とばかりに口にすれば、ティモシーの前で両腕を交差させて憑神はバッテン印を掲げた。
ティモシーがイノセンス化できるのは、AKUMAに取り憑いた時のみ。
ただの人間に取り憑いて操ることはできても、AKUMAは倒せない。
「退け…!」
「このクソが…!」
「しょせんは、にんげんのつくったたて。やぶられるのもじかんのもんだいですね」
嘲笑うレベル4の乱射するAKUMAの銃弾の所為で、助けに行こうにも進めないでいるアレン達。
その背後には、手と耳元を出血で赤く染めたマリの姿。
アレン達とリンク達。
どちらも危機的状況でありながら、どちらに足を向けるべきか。
雪に迷いはなかった。
どう見ても勝ち目がないのは、エクソシストではないリンクの方だ。
彼を助けないと。
(あの子供、なんか見覚えが…)
走りながら手早く結界装置を起動させ、近付いて見えてくるティモシーのシルエットに目を止める。
髪は鮮やかな青翠色。
額には人には見慣れぬ宝石のような玉。
それを除けば、彼は見たことのある人物だ。
あれは確か、ルパン三世とルーブル美術館へ赴いた時のこと──
「なかなかしぶといですね…こざかしい」
嗤いながらもどこか憎々しげに呟く声。
拙い子供のような舌足らずな声が、そう呟いたかと思った。
瞬間。
──ィィイイイイイン!!!!
その口から発せられたのは、音という音ではない、しかし強烈な音の"振動"だった。
「ぐ…!」
「頭、が…っ!」
脳を直接揺さぶってくる強烈な超音波。
一気に神田達の体がグラついた。