My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「………は?」
ドアに正面衝突するかと、咄嗟に固く瞑った瞼。
再びその瞼を開いた時、雪の眼下に広がる世界は全く形を変えていた。
「…はい?」
もう一度、今度は一呼吸置いて唖然と声を漏らす。
目の前は真っ暗な世界だった。
暗い室内などではない。
暗い夜道などでもない。
本当に何もない、ただ真っ暗なだけの空間。
「ドアがない…っ?」
慌てて振り返れば、予想していた孤児院のドアは其処には存在していなかった。
後ろにもただただ、だだっ広く続く真っ暗な空間だけ。
なんだ此処は。
(…別空間に飛ばされたってこと?)
一瞬唖然としたものの、すぐに頭を回転させて考える。
結界を張れる程の者なら、孤児院の中だけを異空間へと変えることも可能なのかもしれない。
(もしかして此処にユウ達が…)
──ドォンッ!
「!」
思考は遮られた。
暗く何もない世界に響く、爆破音に。
反射的に上げた顔。
その音を辿るように向けた視線の先に、雪は微かな明かりを見つけた。
目を凝らす。
ぽつぽつと光る窓ガラス。
硝煙のようなものに、炎もちらほらと見える。
あれは。
「…ハースト孤児院?」
半壊していたが、確かに見覚えのある胡桃色の建物だった。